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教師と生徒もののBLを読むとき、どうしても最初に反応してしまうものがある。いわゆる「倫理観メーター」だ。
それでも読んでよかった、と思える作品にたまに出会う。あさ稲『こっち見てよ、先生』が、まさにそれだった。1000冊近くBL漫画を読んできて、こんなにポロポロ泣いたのは初めてかもしれない。
ひとことで
令和の教師×生徒BLの、いちばん誠実なかたち。関係の危うさをなかったことにしないまま、まっすぐで、ピュアな恋を描ききった一冊。
作品情報
- タイトル:こっち見てよ、先生
- 作者:あさ稲
- 出版社/レーベル:双葉社/チルシェコミックス
- 発売日:2026年5月20日
- ページ数:216ページ
- 価格:880円(税込)
- ISBN:978-4-575-38246-4
あらすじ紹介
高校の入学式、初(うい)は美術の柚原(ゆがはら)先生に一目惚れをする。事あるごとに想いを伝えるも、教師だから、男同士だから、と理由をつけては断られる日々。それでも卒業までの半年、初はまっすぐに想いを伝えつづける——。
感想
「倫理観メーター」が反応するところから始まった
教師と生徒という関係には、どうしたってパワーバランスがある。年齢差だけではなく、立場の差、評価する側/される側という関係、学校という閉じた空間。その中で恋愛が描かれるとなると、こちらも無防備には読めない。
特に「現役」の教師と生徒となると、なおさらだ。大丈夫かな、都合よくロマンチックに処理されないかな、と身構えてしまう。
それでも『こっち見てよ、先生』を手に取ったのは、正直に言うと絵柄に惹かれたからだった。表紙を見た瞬間に、これは読んでみたい、と思ってしまった。倫理観メーターは反応している。でも絵が好き。気になる。そういう入口だった。
先生が、ちゃんと「そこ」をわかっている人だった
けれど読んでみたら、その心配はかなり早い段階でほどけていった。
この作品の先生は、ちゃんと「そこ」をわかっている人だった。教師と生徒という関係の危うさを、物語の都合でなかったことにしない。自分の立場を理解しているし、相手への気持ちだけで突っ走らない。踏み越えてはいけない線があることを、きちんと考えている。
その倫理観があったから、私は安心して読めたのだと思う。
ただ甘いだけでも、ただ切ないだけでもない。相手を好きだと思う気持ちと、相手の人生をちゃんと大事にすること。その両方が描かれていた。そして、そこが本当に良かった。
1000冊読んできて、こんなに泣いたのは初めてかもしれない
私はこれまで、たぶん1000冊近くBL漫画を読んできた。もちろん泣いた作品もある。胸がぎゅっとなった作品も、忘れられない作品もたくさんある。
でも、こんなにポロポロ泣いたのは初めてかもしれない。
何にそんなに泣かされたのかを考えると、やっぱり2人のまっすぐさだったと思う。
ピュアであることと、幼いことは違う
2人とも、とてもピュアだ。でも、ただ無垢で幼いという意味ではない。
相手のことを考えられる。世間体や立場のことも考えられる。そのうえで、自分が決めたことから逃げない。
好きだから一緒にいたい、だけでは終わらない。好きだからこそ、今どうするべきかを考える。自分の気持ちを相手に押しつけず、自分の人生としてちゃんと選び取ろうとする。
その姿が、本当に素敵だった。
教師と生徒ものは、描き方によってはどうしても危うくなる。でもこの作品は、その危うさをわかったうえで、ちゃんと人と人の関係として向き合っていたように感じた。
令和に、教師と生徒のBLで、しかもこんなに泣かされることがあるんだなぁと思った。
こんな人におすすめ
- 教師×生徒ものを、倫理観の面で警戒しがちな人
- まっすぐで健気な片想いが読みたい人
- 「関係の危うさをちゃんと引き受けている作品」が読みたい人
- 泣けるBLを探している人
- 絵柄から入りたい人(表紙、本当にいいです)
まとめ
読む前の私は、少し警戒していた。食わず嫌いしてもおかしくなかった。でも、読んでよかった。
絵柄に釣られて手に取った作品に、こんなふうに泣かされるとは思わなかった。そして読み終わったあとには、ただ「良かった」だけではなく、「ちゃんと大事に描かれていてよかった」という安心感が残った。
『こっち見てよ、先生』は、教師と生徒という関係性の危うさを抱えながら、それでもまっすぐで、誠実で、ピュアな恋を描いた作品だった。
読めてよかった。食わず嫌いしなくて、本当によかった。
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